先日、以下のツイートをしました。
大学職員を「一度はじめたら辞められなくなる仕事」と言ってる人がいました。「仕事がラクでこんなに休みが多いのにこんなに稼げる仕事は公務員と大学職員くらいじゃないか」と。自分も元大学職員ですが、初めて給与明細を見たとき、やらしいですが、思わずニンマリしてしまいました。
— てーや @転職支援ライター (@teeya_monokaki) November 1, 2021
一般的に「年収高め」と言われている大学職員ですが、タイトルにもあるとおり、事実です。給与明細を見て、「こんなにもらっていいの!?」と思ったことが何度もあります。
そこで僕の実体験をもとに、大学職員の給料事情や稼げる理由などについて書いていきたいと思います。
私立大学職員の平均年収は、734万5000円
それでは早速、大学職員の年収の実態と、大学職員として丸7年勤めていた自分自身の年収からお話ししていこうと思います。
大学職員は「国立」より「私立」が高年収
まずは、こちらをご覧ください。
<一般会社員と大学職員の年収比較>
一般会社員 | 546万4200円 | 厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』 |
大学職員(国立) | 584万9000円 | 文部科学省『国立大学法人及び大学共同利用機関法人 の役職員の給与等の水準(令和2年度)の取りまとめ』 |
大学職員(私立) | 734万5000円 | 日本私立学校振興・共済事業団 調べ |
これを見れば一目瞭然。高収入をめざしているのなら、私立大学職員一択です。一般会社員との平均年収が約200万円もの差があるとなると、決定的といえるのではないでしょうか。
一方、国立大学の職員ですが、実はそこまで年収が高いわけではありません。民間企業の平均年収と大差はないです。国の機関だけに雇用の安定性はバツグンですが、年収で転職先を決めるのであればやはり私大を選ぶべきです。
年収1000万円超えも珍しくない
特に高年収を稼いでいる(と言われている)東京六大学の年収比較をしてみました。
<東京六大学の職員の平均年収比較>
明治大学 | 約1140万円 |
立教大学 | 約1100万円 |
早稲田大学 | 約1080万円 |
法政大学 | 約1030万円 |
慶應義塾大学 | 約950万円 |
東京大学 | 約650万円 |
明治大学の職員の年収は、「全国で一番高いのではないか」と大学職員の間では有名です。東京六大学以外でいうと、関西大学や中央大学の職員も平均年収が1200万円前後と言われていますね。
改めて言いますが、これ、平均年収ですからね。つまり、50代にもなれば、2000万円超えの職員もフツーにいる、ということです。
とある研修で、入試の志願者数が全国一多い有名私大の職員(30代)といっしょになったとき、何気なく給料事情を聞いてみたんです。すると、「1000万円は超えてますが、まだ全然ですよ」なんて言ってました。まるで住む世界が違いますよね。
小規模私立大学(地方)の職員の年収は?
せっかくなので、自分の話もしておきたいと思います。
僕は大学職員として2021年夏まで勤めていました。勤務先は、地方の私立大学。学生数1000名ほどですので、小規模ですね。
ただ、小規模といってあなどるなかれ。給料は良いです。
とある保険会社の方が言ってましたが、地元では市役所、東証一部上場企業(メーカー)に次いで、三番目に高収入とのこと。これには驚きましたね。
僕の場合、30歳になったばかりの年に中途で入職しました。最初は契約職員でした。
契約職員の給料は、正直めちゃめちゃ低いです。都内の新卒社員よりも低い。ボーナスも無しです。結果、前職よりも年収は半減しました。
でも、給料が安かったのは、契約職員のときまで。
入職から1年半が経つと、正職員への登用を打診されました。正職員登用が前提の採用だったんです。
雇用契約書に書かれた給与額を見て、驚きましたよね。「ん?前職より高いぞ!?」と。
都内から地方への転職だったので、年収が下がることは覚悟していました。正職員になれたとしても、たかが知れているだろうと。そんな思い込みが、良い方向にハズれたのです。
前職のときのように、月100時間近い残業はありません(大学は月20時間くらいでした)。ノルマなんてものもありません。当然、上司からのプレッシャーや業績を追い続けるストレスなどもありません。
ルーティンワークをこなしているだけで、こんなに給料が高いなんて!
ちなみに、20年以上勤務している40代・50代の職員の年収は、もっとすごいです。僕の年収とは、ケタが違いましたから。
大学職員の新卒の年収は?
新卒で入職した職員の年収も「高い」のが、大学職員です。新卒の場合、年収はどのくらいなのか、一般会社員と比較して見ていきましょう。
大卒1年目の平均年収
◆一般会社員
月収(月給23万円+各種手当)×12ヶ月+賞与=約250~300万円
◆大学職員(国立)
月収(月給18.5万円+各種手当)×12ヶ月+賞与=約250~300万円
◆大学職員(私立)
月収(月給21万円+各種手当)×12ヶ月+賞与=約350~400万円
各企業・各大学によって給与設定が異なるため、一概に言うことはできませんが、以上が大卒1年目のそれぞれの平均年収と言われています。
ポイントは、「充実した手当」と「賞与の多さ」ですね。
中小・零細企業の場合、手当が支給されない会社もある一方で、大学職員の場合、家族・扶養手当や住宅手当などの諸手当が支給されるケースが多いです。
加えて、民間企業の賞与は、会社の業績や個人の成果に応じて変動することが一般的ですが、大学の場合、毎年一律の金額で支給されるケースが少なくありません。しかも、年間3~4ヶ月は普通で、有名私大などでは毎年6~7ヶ月分支給される大学もある。
基本給は一般サラリーマンと同等の金額でも、「手当」と「賞与」で差がつくと考えておいて間違いはないです。
大学職員の年収が高い理由
次に、「なんでそんなに稼げるのよ?」について解説していきたいと思います。理由は大きく2点です。
大学は安定収入が得られる
大学は一般的なビジネスとは異なり、外部環境の影響を受けにくい業界といえます。
もちろん“少子化”は直接的なリスクになりえますが、それ以外の外的要因で需要がなくなる、ということが今までの歴史にはありませんでした。
しかも教育機関なので、入学した学生は基本的に4年間(学部によって6年間)在籍することになります。つまり、学納金を確実かつ継続的に納めてもらえるので、数年後まで収入の見通しが立つわけです。
また、大学の管轄は文部科学省になるので、国から補助金が付与されます。国立大学のみならず、私立大学もです。そりゃあ安定した収入が期待できるよねって話です。
待遇・手当が充実している
僕の実例をベースにしながら解説していきましょう。支給される手当は、残業手当・住宅手当・家族手当・役職手当と盛りだくさん。賞与もたんまりです。
■残業手当
全額支給(残業は月平均30時間⇒月4~6万円)
■住宅手当
月2万円(一律支給)
■家族手当
配偶者:月2万円、子1人につき:月1万円
【例】5人の核家族の場合⇒月5万円
■役職手当
肩書きアリ⇒月数万円(僕は肩書きナシ)
■賞与
年2回⇒基本給の4ヶ月分
だいたいこんなかんじ。
僕自身、役職はついていなかったので、役職手当はありませんでした。が、それでも充分。残業手当・住宅手当・家族手当を合わせて、月10万円は超えていました。これが基本給にプラスされるわけです。
ちなみに、とある繁忙の時期に、従業員の退職によりマンパワー不足になったことがありました。このとき残業が月80時間を超えたのですが、この月は毎月の基本給に20万円近くプラスされましたからね。お役所体質で「残業はきちんと付けるように」という風土が根づいているので、遠慮することなく時間外を付けられるのです。
役職手当は腹立ちますね。年功序列で定着率が高いせいか、肩書きが付いている40代・50代がゾロゾロといます。主任、係長、課長補佐…などと付いてるだけで、月数万円の上乗せです。仕事内容は僕とほとんど変わらないのに。。。
さらに言えば、たいした仕事をしていなくても、いるだけで年1回必ず昇給します。評価制度なんてあってないようなものだったので、何もしなくても、いるだけで、お金がたくさん入ってくる。それが大学職員なんだ、と思ったものです。
…というわけで、前述した待遇・手当は、あくまで「地方の小規模大学」に勤めていた僕の実例です。首都圏の有名私大であれば、こんなもんじゃありません。たとえばボーナスでいえば、うちの大学は4ヶ月分でしたが、中規模以上の私大であれば5~6ヶ月分がフツーですから。
給料が高すぎる大学職員の実態
労働条件がこれだけ良ければ、誰も辞めたりはしません。退職者は稀にいるくらいです。特に50代の職員から共通してにじみ出ているのが、「こんな天国みたいな環境、定年まで離すもんか」という強い意思です。これはひしひしと伝わってきましたね。
50代にもなると、ある程度の役職者が多いので、仕事量を自分で調整できちゃう。「あとは若い者に託した」なんて都合のいいことを言いながら、めんどくさい仕事は若手に任せる…なんてこともできるわけです。
一日の流れも、ほんとのんびりとしています。ちょっと早めに出勤して、コーヒー片手に新聞を読みつつ、就業開始とともにゆっくりメールチェック。ランチは学食で学生の輪に交じって、ワイワイガヤガヤ。
午後はデスクでひなたぼっこしながらうたた寝(←実在します)。定時になると「それじゃ邪魔になるのでお先に…」とつぶやきながら、そそくさと職場をあとにする。
…と、こんな毎日で年収8ケタ。これ、冗談じゃなく、実話です。そんな世界が現実にあるんですよ!
僕が勤めていた大学では、60歳を過ぎると嘱託職員になります。給料は少し減りますが、65歳の定年まで5年ほどのんびりいられる期間が増えるわけです。
そして、お待ちかねの退職金。30年も勤務していれば、うん千万です。これだもん、50代の職員が「天国みたいな環境」というのもわかりますよね。
ちなみに、あなたが志望している大学の実態が知りたければ、転職会議を見ておくといいでしょう。いわゆる企業の口コミサイトなんですが、大学の“内部事情”もたくさん掲載されています。
ある日の転職会議で大学の口コミを調べてみたところ、269件もヒット!有名大学はもちろん、地方の中堅大学や小規模大学などの口コミも載っていますよ。
たとえば『早稲田大学』の口コミは、587件も載ってます↓

ぜひ一度、のぞいてみるといいと思います。
少子化で大学職員の年収は下がるのか?
大学職員への転職を検討している方ならば、一度は考えたことがあるでしょう。そう、少子化問題です。
取り急ぎ結論ですが、少子化の影響で大学職員の年収が下がることは充分にありうるという回答になります。その背景にあるものを一つひとつ紐解いていきましょう。
まず大学というものは、各学部学科の募集定員にあわせて教職員の数が決まる仕組みになっています。たとえば、A学部の定員を400名(100名×4学年)で設定すると、教員は30名、職員は10名のようなかんじ(あくまでイメージ)。つまり、400名分の学納金の何割かが教職員40名に配分されるわけです。
ところが、定員400名の学部に300名しか学生が在籍していないとなると、原資が少なくなりますよね。当初の計画どおりに学納金収入が得られなくなる⇒教職員に支払われる給与にしわ寄せが来る、ということになる。
わかりやすくまとめると、定員割れを起こしている大学は、教職員の給与に影響をきたす可能性が高くなるということですね。
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実は、僕が勤めていた大学がまさに前述したような状態に陥っています。学生募集がうまくいかず経営難が続いているんですが、最初のうちはなんとか経費を削減しながらやり繰りしていたんです。ただやはり限界があり、最終的に教職員の減俸に踏みきるかたちになったわけです。減俸の対象者は、経営陣と現場の管理職、さらには多額の年収を稼いでいたベテラン教職員ですね。僕は当時、入職5年目だったので、対象にはなりませんでした。
うちの場合、地方の小規模私立大学なので、少子化の影響をもろに受けやすいんですよね。とはいえ、少子化がさらに加速する昨今において、こういう悲惨な状況は他大学でも充分ありえることじゃないかなと。
「大学職員の将来性」については、別記事(大学職員の仕事は今後なくなる?)で詳しく書いているので、気になる方はそちらもあわせてご覧ください。
大学職員の求人の探し方【注意点】
少子化の不安はあれど、まだまだ「大学職員=高給を稼げる職業」に間違いありません。ただし、求人を探すうえで2つのポイントがあるので、ぜひ押さえておいてください。
◆まずは、定員充足の状況を確認することが超重要!
◆学生数3000人を超える中規模クラス以上の大都市圏大学を選ぶのが無難!
(※地方の小規模大学でも、定員が充足している大学は安心です)
この2点を押さえて、求人を探してみてください。
ちなみに、大学職員の求人に強い転職支援サービスがあることをご存知ですか?
数ある転職支援サービスのなかでも、大学職員の求人に強いサービスと、大学職員の求人をまったく取り扱っていないサービスが明確に分かれているのです。
まずはこれを把握しないと、大学職員の求人を取り扱っていないサービスを使い続けることにもなりかねないので、注意が必要です。
もし、大学職員の求人を豊富に扱っている転職支援サービスを知らないという方は、大学職員の求人に強い転職支援サービスとは?をご覧ください。
僕が大学職員を辞めた理由【参考】
ここまでツラツラと天国の世界の話を書いていると、「なんで俺は辞めてしもたんや!」と自分を疑いそうになりますね。
じゃあなんで辞めたのよ?ですが、安定にあぐらをかいている40代・50代の人たちと一緒に働きたくないと思うようになってしまったんですよね。
大学が今より活気のあった時代を知っている人たちは、よくこんなことをつぶやいているんです。「努力しなくても勝手に学生が集まってきていた時代は良かったなぁ」と。
結局、過去を懐古しているだけなんですよね。良かった時代を自分たちで取り戻すつもりはないんです。というか、やり方がわからないのかもしれません。今まで考えたり行動したりしなくても、自ずと定員は集まっていたので。
そんな人たちの背中を毎日見ていると、「ここに長居はできないな」と。そんな気持ちが日に日に強くなり、丸7年で自分から辞めていったんですよね。
この記事を書いてる今も、つくづく思います。とんでもなく、大バカ者かもしれないと。あれほどの年収と安定を捨てたわけですから。奥さんにも、奥さんの親御さんにも、「え?なんで?」と言われましたから。
まぁ、悩んだあげく自分で決めたことですからね。いいんです。いいんです(泣)…そんなレアな人間もいるってことです。
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